うまくいかない日もあります。
生地が思うようにまとまらなかったり、
時間に追われて気持ちが沈んでしまうことも。
それでも、オーブンの前に立つと、
不思議と心が静かになります。
バターが溶け、
甘い香りがふわりと広がると、
胸の中のざらついた気持ちが少しずつほどけていく。
扉を開けると、
焼き色をまとったお菓子たちが
やさしく笑っているように見えます。
ああ、今日もちゃんと焼けた。
それだけで、少し前を向ける気がします。
そして、お客様が楽しそうにお菓子を選んでくださる姿。
「おいしかったです」と伝えてくださるその言葉。
そのすべてが、私の心を満たし、明日への力になります。
お菓子を作ることも、食べてもらうことも、
どちらも私の人生の中にある、確かな幸せ。
うまくいかない日も、
オーブンを開ければ、あたたかな光が待っている。
その香りに包まれながら、
今日もまた、焼き続けていきます。
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